特集 CURRENT TOPICS 腸内フローラ研究の最前線
5 消化器癌と口腔内フローラ
小林 正伸
1
1北海道医療大学看護福祉学部 教授
pp.36-38
発行日 2017年8月10日
Published Date 2017/8/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0039.13.01_0036-0038
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消化管は多くの常在菌が定着していることが特徴とされており,口腔内には700種類以上の細菌が1兆個,大腸には1,000種類以上の細菌が100兆個も存在するといわれている。ある種の腸内細菌は,大腸癌の発症に関与する可能性が指摘されており,Helicobacter pylori菌が胃癌に関与することを含めて考えると,臓器に定着している細菌がその臓器の粘膜上皮細胞に対して何らかの機序を介して遺伝子変異やepigeneticな変化をもたらしている可能性がある1)。口腔は,外来の微生物が体内に入る際の侵入口となっており,胃や大腸に定着している細菌も,口腔内への定着の有無を別として口腔内を通過していることは間違いない。口腔内細菌の場合には,腸内細菌とは違って歯垢となったり,歯周ポケットに入り込んだり,扁桃に張り付いたり,菌が動かない状態で増殖している可能性が高い。歯肉炎や歯周病などの深い部位の炎症病変では,歯垢などの細菌がリンパ管のopen junctionから侵入しやすくなり,リンパ管を介して頸静脈に侵入する場合もある2)。歯の治療後数分で血中に細菌が現れることからもその可能性が高いと考えられる。血中に入った細菌は,好中球に貪食されることもなく,血小板の中などで生きていることが確かめられている3)。こうした歯周疾患における口腔内細菌の血管内侵入の事実は,歯周病の炎症部位で産生されるサイトカインなどの炎症性物質の全身への拡散と相まって,口腔内細菌が歯周病を介して全身に影響を及ぼす可能性を示している。
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