特集 臨床細菌検査
Ⅲ.疾患別検査の進め方
3.口腔内
佐川 寛典
1
1大阪歯科大学細菌学
pp.1251-1259
発行日 1983年11月1日
Published Date 1983/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912020
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口腔内疾患の特殊性
口腔の感染症は,身体の中では発症頻度が高いといわれている.それは口腔の環境が微生物にとってきわめて好い条件が揃っているからである.水分,温度,pH,好気的,嫌気的条件や栄養源などである.また,口腔は直接外界と通じ,微生物の排出や侵入が常に繰り返えされている.この流動的な状態であるにもかかわらず,口腔には多くの菌種と安定した常在菌叢が成立している.そこで口腔内での感染症は,常在菌による感染,すなわち内因感染と外来性の細菌による感染疾患とに2大別することができる.口腔内疾患は,そのほとんどが内因感染で宿主である生体の抵抗性の減弱やその他の素因,誘因は発症の引き金となっている.外因感染で口腔内に原発巣をもつ疾患はきわめて少なく,また内因感染症においても,単一の起病菌で起こす口腔疾患はきわめて少ないのである.大部分の口腔内疾患はその病名は異にしても,起病菌は共通した菌によることが多い.そこで,本項では,単一起病菌で特異的感染をする疾患として,内因感染症から口腔カンジダ症と放線菌症,外因感染症から口腔梅毒を例とし,口腔のその他の疾患については統括的に検査の進め方を述べ,さらに歯の歯内療法領域の検査法について述べることにする.
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