連載
目で見るホルモンと生殖医学の最前線
田村 博史
1
1山口大学大学院医学系研究科産科婦人科学准教授
pp.4-9
発行日 2022年9月1日
Published Date 2022/9/1
DOI https://doi.org/10.34449/J0015.29.03_0004-0009
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
松果体ホルモンであるメラトニンは,夜間にのみ分泌され生体内リズムや生殖機能などを調節する。一方で,卵胞液中にも高濃度に存在することから,メラトニンは直接的に卵巣機能を制御している可能性がある。さらに,活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)を消去する抗酸化作用をもつことも証明され,メラトニンは神経内分泌作用に加えて,膜受容体を介さない直接的な抗酸化作用で多様な生理作用を発揮する。われわれは,卵巣におけるメラトニンの直接作用に注目しており,排卵過程で発生するROSから卵子や顆粒膜細胞を保護する可能性について研究し,また,不妊症患者に対してメラトニンを投与することで卵子の質を向上させる臨床研究も行っている。さらに,アンチエイジングホルモンとしても注目されているメラトニンを長期投与することで,卵子数の減少,卵子の質の低下といった卵巣加齢の予防効果も研究しており,これらについて解説したい。
Medical Review Co., Ltd. All rights reserved.