特集 動物の行動機能テスト―個体レベルと分子レベルを結ぶ
5.カエル
生殖行動とホルモン
石居 進
1
1早稲田大学教育学部生物学教室
pp.538-539
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900825
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目標
内分泌学の発展には実験用のラットやマウス,家禽のニワトリやウズラなどが実験動物として大きく貢献してきた。しかし,これらの動物は特殊化したものであって,野生種とはいろいろな点で異なっている。そして,脊椎動物のほとんどを占めているのは野生の動物である。したがって,脊椎動物の内分泌調節機構を本当に知るには,野生の状態の動物をよく観察し,それをもとに,野外であるいは研究室で実験的に調べることが必要である。そうすることによって,これまで明らかにされた内分泌調節機構の普遍性が確かめられたり,また新たな内分泌調節機構が発見されるのではないかと考えられる。このような理由から,われわれはヒキガエルを研究の材料として行動内分泌学の研究を行った。ヒキガエルの成体はかつては研究や実習の材料としてよく使われていたが,現在では一部の研究を除くと1),第一線を離れてしまっている。
ヒキガエルを材料に選んだ理由はいくつかある。まず,1年間に活動が際立った変化を示し,その上,短距離ではあるがマイグレイションまでする。また,繁殖期がはっきりしていて,しかも,性行動が生態学的によく調べられている。さらに興味深い点として,繁殖期がまだ気温が低い早春であること,繁殖期には陸棲から水棲に変わることなどがあげられる。その上,大型で発見するのも楽であるし,血液をとったり,手術をするのも楽である。
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