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エストロゲンとプロゲストーゲンは,卵巣,副腎,胎盤などで合成されるステロイドホルモンである。エストロゲンの語源は,古代ギリシャ語である「estrous」(雌の哺乳類における性の状態),「genos」(生成する)に由来するものである。一方,プロゲストーゲンの語源は,ラテン語で「pro-」(何々のために)とgest-(妊娠する)に由来している。これら語源からも明らかなように,性ホルモンであるエストロゲンとプロゲストーゲンは,性行動と妊娠に必要なホルモンといえる。エストロゲンは生殖器においては,卵胞発育,子宮内膜増殖など発育に深く関わるほか,子宮頸管粘液産生増加など機能成熟ももたらすが,皮膚,血管,内皮,骨などにいくつかの非生殖組織においても重要な役割を担っている1)。すなわち,エストロゲンの量的質的な異常は,生殖機能の低下のみならず,全身の機能低下と疾病の誘導を意味する。一方,プロゲストーゲンは,排卵,受精,着床,胚の発達,乳房の発達,および分娩など,月経周期および妊娠の成立と維持に生じる一連の必須事象の制御に関与する2)3)。女性の生殖に重要な役割を果たすプロゲストーゲンのシグナルが不十分な場合は,妊娠が成立しないことはいうまでもなく,流産,早産などの妊娠維持に異常が生じると考えられる。一方,子宮筋腫,子宮内膜症,子宮腺筋症,乳がん,子宮内膜がんなどの婦人科疾患の発症と関連していると考えられる4)5)。このため,エストロゲンやプロゲストーゲンがどのように作用するかを理解することは,より効果的な治療法の開発に貢献し,これらの障害をもつ女性の生活の質を向上させ,妊娠・出産を成功させる可能性を高めることができると考えられる。
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