連載
脳におけるエストロゲンの見えざる作用 第30回
武谷 雄二
1
1東京大学名誉教授/医療法人社団レニア会アルテミスウイメンズホスピタル理事長
pp.71-75
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.34449/J0015.28.03_0071-0075
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これまで母親および父親の脳の形成にプロラクチンとオキシトシンが重要なホルモンとして関わっていることを述べてきた。プロラクチンとオキシトシンは育児のみならず,性行動,授乳,ストレス緩和,不安軽減,摂食行動などにも協調的に作用している1)。なお,苛酷な自然界で棲息する動物たちにおいてはストレス,不安などの心的状態の克服,摂食などは生殖現象に密接に関わっており,これらは広義には生殖現象に包含されるとみなすことができる。また母親,父親が子を育てるときにはプロラクチンとオキシトシンのいずれもが必須のホルモンであり,それらの分泌は亢進している。このように眺めると,両ホルモンは生殖現象の種々のステージにさまざまな形でお互いに刺激し合おうという関係ならば,大変合理的なメカニズムといえる。本稿では最近解明されてきた両者の相互作用について解説する。
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