連載 R&D ~第一人者に聞く~
バイスペシフィック抗体「エミシズマブ」開発秘話 ―血友病―
嶋 緑倫
1
1奈良県立医科大学 副学長/医学部長
pp.38-41
発行日 2024年3月10日
Published Date 2024/3/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.41.01_0038-0041
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私は子どもの頃は喘息がひどく、夜中に呼吸困難を起こすたび父に背負われ、家の外でやり過ごしていたようです。小児科の先生にもよくお世話になりました。小学生になると喘息キャンプに参加し、レクリエーションや遠泳などで楽しい思い出ができましたが、同行していた小児科医も優しく、憧れの存在として心のなかに残りました。ただ、奈良県立医科大学(以下、奈良医大)に進学し、臨床実習が始まる頃には脳神経外科が第一志望でした。奈良医大の脳神経外科は有名で、優秀な医師の集まる医局だから、という理由です。5年生の夏休みに脳神経外科のエクスターンシップに手を挙げ、手術も見学して、「高度な技術を駆使する、すごい世界だ」と感激しました。ところがよくよく観察すると、手術中、顕微鏡を駆使して複雑な操作を行う医師はたったの1人です。その1人に自分は登りつめられるのか、あの繊細な作業を一生続けられるのかと考えた途端、トーンダウンしてしまいました。
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