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ペニシリン発見から90年余りが過ぎ,数多くの抗菌薬が開発され,その都度より強力な耐性菌が出現してきた。小児感染症の主要な原因菌についても,第一選択薬への耐性化が進み,ペニシリン耐性肺炎球菌,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA),第3世代セファロスポリン耐性グラム陰性桿菌,マクロライド耐性マイコプラズマなどが診療に大きな影響を与えている。さらに近年は,あらゆる抗菌薬が無効な多剤耐性菌の出現により,抗菌薬の開発が追いつかない状況となってきた。感染症の死亡率は菌種にかかわらず,耐性菌であると死亡率が2~3倍に上ることが知られているが,一部の試算では,このまま対策を講じない場合,2050年には薬剤耐性菌による死亡が悪性新生物や循環器疾患などを超過すると報告されている。この事態を受けて2015年に世界保健機関(WHO)から,薬剤耐性菌(antiicrobial resistance:AR)を世界的な脅威と捉えてグローバルアクションプランが提示された。世界各国はこれに倣い,2016年には日本政府も関係省庁,関係機関などが協働して集中的に取り組むべき「薬剤耐性菌(AR)対策アクションプラン」が公開され,ヒト・動物・環境を含めたワンヘルスアプローチのもと,産官学が連携してこの問題に取り組むことが宣言された。AR対策アクションプランの骨子は,教育・啓発,サーベイランス,感染対策,抗微生物薬適正使用,研究開発,国際協力からなり,さまざまな取り組みがなされてきた。「KEY WORDS」薬剤耐性菌(AMR),抗微生物薬適正使用,AMR対策アクションプラン
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