特集 小児感染症の今
特集にあたって
尾内 一信
1
1川崎医療福祉大学子ども医療福祉学科 特任教授
pp.7-7
発行日 2021年8月20日
Published Date 2021/8/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.39.08_0007-0007
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このたび,特集「小児感染症の今」を企画するチャンスをいただいた。小児感染症の各領域で最も実力のあるオピニオンリーダーの先生に,小児感染症のそれぞれの領域の最新情報をご多忙中にも関わらず執筆していただいた。現在は2019年末から始まった新型コロナウイルス感染症の世界的流行の真最中であるが,40年の小児科医人生で今までに一度も経験したことのない小児感染症発生動向を体験した。もし希望してかなうならばこのような小児感染症発生動向の激変を経験はしたくなかったが,臨床医,特に小児科医にとって,非常に貴重な経験をしたと思っている。社会全体で新型コロナウイルス感染症対策としてマスク,手指衛生,3密を避ける,適正な換気などの新しい生活様式を実践した影響で,飛沫・接触感染経路の感染症が細菌感染症もウイルス感染症もほとんど流行がない状況である。また,SARS-CoV-2に対する有効なワクチンが,1年以内に開発されたことにも非常に驚いている。まさに驚くべき医学の進歩である。今後SARS-CoV-2ワクチン接種が社会全体に行き渡り,COVID-19の流行が収まり,社会の感染対策が緩和されると約2年間感染症に罹患していない子どもたちにさまざまな感染症の大流行が予想される。また,2年間感染者数が減少している川崎病の増加も心配である。COVID-19対策は,何から何まで試行錯誤だったと思われるが,この貴重な経験を将来に生かせるように必ず社会全体で総括する必要があると思う。
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