- 有料閲覧
- 文献概要
歴史的にわが国の難病が国民に広く知られるようになったのは,まさに神経難病であるスモン(SMON)に遡る。この疾患はわが国にのみにみられ,しかも昭和42~43年頃に急増した。当時は原因不明の奇病と言われ,これを受けて昭和44年に厚生省に調査研究協議会が組織され,翌年にスモンとキノホルムとの因果関係が初めて示唆された。神経難病は,原因が不明で根治的な治療法がなく,次第に障害が進行し,身体機能やコミュニケーション能力が著しく障害されるものと規定されるが,このSMONの発症原因の解明はわが国の神経学者を中心とした徹底的な研究調査が,特殊な例とはいえ,難病の原因を突き止められる可能性を示唆したものと思われる。実際には難病は広く存在し,昭和47年には難病対策要綱が策定された。この要綱の中において,難病は,原因不明,治療方針未確定であり,かつ,後遺症を残すおそれが少なくない疾病であり,経過が慢性にわたり,単に経済的な問題のみならず,介護などに等しく人手を要するために家族の負担が重く,また精神的にも負担の大きい疾病,と定義され,まず,第1次実施分として110疾病が指定された。その後指定疾病は次第に増え,在宅療養の継続や長期入院先の確保には困難が生じることが多い問題の解消を目指して各都道府県に難病医療コーディネーターを配置,難病医療ネットワークが構築されてきた。しかしその支援内容は地域格差が大きく,神経難病患者とその家族のニーズが十分に満たされているとは言い難く平成26年5月に「難病の患者に対する医療等に関する法律」が制定された後も少なからない問題を残している。一方,難病指定疾患は神経難病以外にも拡大され,令和2年9月20日現在,333の病気が国の指定する難病となっている。
Medical Review Co., Ltd. All rights reserved.