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本誌で「多発性硬化症(MS)と視神経脊髄炎(NMO)の最新情報」という特集が組まれたのは2013年のことである。その冒頭の総説の標題は,「MSとNMOはどこが違うか」であり,5年前の多発性硬化症(multiple sclerosis;MS)と視神経脊髄炎(neuromyelitis optica;NMO)の診療がどのような状況であったかが想像できる。この時点では, NMOとは抗アクアポリン4(aquaporin-4;AQP4)抗体という自己抗体が存在するために,中枢神経組織の星状膠細胞が最初の自己免疫の標的となる疾患として認知されつつあった。ところが,神経免疫学の進歩により,NMOは2015年の改訂診断基準でneuromyelitis optica spectrum disorders(NMOSD)という概念に包括されるとともに,単一の疾患ではなくなった。すなわち,MS・NMO診療ガイドライン2017の解説にも述べられているように,抗AQP4抗体陰性のNMOSDは,これまでに知られている同抗体陽性のNMO患者とは異なる病態を有し,その一部は抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(myelin oligodendrocyte glycoprotein;MOG)抗体という新規の自己抗体が陽性である。このような患者群は,神経症状はNMOと類似しているにもかかわらず,その病態はMSに代表される脱髄疾患の特徴を備えている。しかも,通常のMS診療で用いられる疾患修飾薬(disease-modifying drug;DMD)が必ずしも奏効しない。このように,MSという大きな概念のなかで捉えられていた中枢神経系の炎症性(脱髄)疾患群のなかから,抗AQP4抗体や抗MOG抗体などの新たなバイオマーカーで識別され,特異的な治療法が確立していく疾患亜群もしくは異なる疾患単位が次々に見いだされる時代が到来している。
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