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国民生活基礎調査によると,15歳以上の人口千人あたりの便秘の頻度は,男女比では約1:2で女性に多く,また男女とも年々増加傾向にあり,2010年のデータによると,人口千人あたりの便秘の頻度は女性61人,男性29人となっている。慢性便秘の患者数は加齢とともに増加することを考慮すると,今後さらに患者数は増加の一途を辿ることが容易に想像できる。慢性便秘は患者の生活の質を低下させるだけでなく,近年の米国からの検討によると患者の生存率にも関係していることが報告されており注目されている1)。その理由の1つに排便回数の減少と心血管疾患死のリスクとの正の相関関係がわが国から報告されていることがあげられる2)。大崎地域住民を対象とした,このコホート研究では,40~79歳の住民45,112例を対象とし,排便頻度と心血管疾患死の関連を検証しており,排便回数が1日1回以上の群に比べ,2~3日に1回の群の年齢と性別で調整した心血管疾患死のハザード比は1.30,4日に1回以下の群では1.62であり,排便回数の減少が心血管疾患死のリスク増加と関連していることを示している。さらに,排便回数の減少は脳卒中や虚血性発作のリスク増加とも関連がみられている。前述のことを考慮すると,慢性便秘患者に対し病態にそった適切な治療を行う必要がある。しかしながら,現状では慢性患者の多くは市販薬を購入するかあるいは民間療法で便秘症状に対処しており,医療機関を受診し治療を受けている患者は4割にも満たないことがこれまでの調査から明らかになっている。このことは刺激性下剤の乱用にもつながり,今後解決すべき重要な問題点の1つと考えられる。本稿では,慢性便秘薬としての漢方薬に焦点を絞り,その使い方および注意点について概説する。「KEY WORDS」慢性便秘,作用機序,注意点,エビデンス
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