文学にみる病いと老い(100)
お蝶夫人―小説三浦環
長井 苑子
,
泉 孝英
pp.100-106
発行日 2017年8月20日
Published Date 2017/8/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.35.08_0100-0106
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日本人で初めて国際的な評価を得たオペラ歌手「三浦 環」。プッチーニー*1 の「蝶々夫人」の「蝶々さん」として国際的に有名になった。出生名は柴田 環,次いで,藤井 環,三浦 環,多くの男性を愛し,愛された63年の人生であった。ドイツ医学留学生の記録集めに精進している共著者から,大正3(1914)年ベルリンに留学した「三浦政太郎*2」という医師の妻が,三浦 環という一世を風靡したオペラ*3 歌手であることを聞かされた。三浦 環とお蝶夫人というくだりだけはクイズ問題のように知っているだけのことであったが,一度,ラジオから「ある晴れた日に」の声を聞いたことを思い出した。そして,瀬戸内晴美が,三浦 環の一生を小説仕立てにして,「お蝶夫人」という作品にしていることを知った。読んでみると,三浦 環の情熱的で音楽に魂をささげた生きざまもさることながら,最後には,膀胱がん*4の治療をほとんどうけぬままに,末期がんと共生しながらも最後まで歌を歌い,最後を看取る若き恋人との生活をまっとうした話のすさまじさに驚かされた。そして,連載「文学にみる病いと老い」の100回,最終回のテーマとして紹介させて頂くことにした。
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