文学にみる病いと老い
(89)「ある小さなスズメの記録 人を慰め,愛し,叱った,誇り高きクラレンスの生涯」
長井 苑子
,
泉 孝英
pp.86-93
発行日 2015年10月20日
Published Date 2015/10/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.33.10_0086-0093
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第二次世界大戦中のロンドン郊外で,足と翼に障碍を持つ一羽の小スズメが老婦人に拾われた。婦人の献身的な愛情に包まれて育った小スズメは,爆撃機の襲来に怯える人々の希望の灯火となっていく―。(本書函の帯封裏より引用)難病*1の患者さんを長く診ていると,年を重ねてくると病気が安定化してゆっくり進み,本来の難病による呼吸不全*2や心不全*3によるものではなく,認知症*4や足腰の筋力低下による歩行困難のために通院困難になるという場合が少なくない。難病は管理・治療の進歩によって生き延びることができるようになってくると,老化*5による生活機能の衰えがより深刻な課題となる。長寿社会*6において病気を看取るということに新たな課題が付け加わってきている。家族同様かそれ以上の心のよりどころだったペット*7の死は,人に大きな喪失感を与えることになる。「ペットロス症候群*8」である。
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