地方医療史概観
製糸の町で開業医90年モノ語り(21) 記念の聯(昭和初期)
白川 貴士
1
1市立岡谷病院産婦人科部長
pp.98-99
発行日 2015年4月10日
Published Date 2015/4/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.33.04_0098-0099
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細長い板に篆刻が彫られたもので,聯という。聯は対聯といって本来2枚1組なのだが,日本では床柱に懸けるため1本だけのものもよくみる。最下段に「記念岡谷市醫師會」とあって,書道では戦後でも旧字表記をすることが多いけれど戦前は「紀念」と表記することが多かった。家人の記憶では「戦前からあったような気がする」ということなので昭和初期のものと思われる。先代医院長のお祝いに貰ったものか,医師会の記念行事の記念品かわからない。文は上に「仁以為心」下が「不為良相 愿為良医」で,それぞれ篆書の上に楷書が添えられている。読めない人のためにと,ご丁寧に解説文が付いているという芸術作品は実に珍しいものではないか。以為は「―を以て~と為す」と読んで,“~思う・みなす”の意であるから「仁を以て心と為す」つまり「医は仁術ということを心の基本にする」かと思われる。「~と心得よ」かも知れないが漢文は命令形がはきりしないから不詳。
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