特集 子宮内膜・子宮内腔とその異常
ねらい
五十嵐 敏雄
1
1帝京大学ちば総合医療センター産婦人科
pp.1317-1317
発行日 2024年12月1日
Published Date 2024/12/1
DOI https://doi.org/10.34433/og.0000000951
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子宮内膜は胚の着床を目的とし,着床成立後は脱落膜として妊娠維持に寄与する.妊娠が成立しないと黄体が2週間の寿命を迎えて,子宮内膜は黄体からのプロゲステロンの分泌とその後の分泌低下を受けて細胞死を起こし,月経血として剝がれ,やがてまたそこに新しい子宮内膜が再構築されるというサイクルをくり返す.月経はサルとヒトにしかないとされ,毎月新しいものが形成されるような臓器はほかにない.子宮内膜はエストラジオールの影響下に増殖し,プロゲステロンの影響下に過度の増殖が抑えられるが,その働きの理解には子宮内膜におけるエストロゲンやプロゲステロンの受容体の発現周期を知ることが大切になる.剝がれた子宮内膜は月経血として排出されるだけでなく,卵管を経由し腹腔内に逆流してマクロファージやナチュラルキラー細胞の貪食を受ける.原因が貪食細胞の異常なのか,逆流した子宮内膜の細胞死が不十分で貪食を受けないのかについて結論は出ていないが,逆流子宮内膜の貪食回避は子宮内膜症発症の一因となる.子宮内腔でなく腹腔内に異所性に残った子宮内膜は卵巣やダグラス窩腹膜に染み込んでやがてまるで腫瘍のように振る舞うこともある.
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