- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
薬剤選択のポイント
経口エストロゲン製剤として多種のエストロゲン成分が混在している結合型エストロゲンとヒト卵巣由来のエストロゲンであるエストラジオールのみのエストラジオール製剤がある.前者は通常量のホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)のみであるが,後者は1錠では低用量のHRT,2錠では通常量のHRTとして使用できる.また後者がより自然に近いため副作用の観点から現在では前者よりも使用頻度が高い.外用薬よりも内服薬を好む,または使用しやすい・忘れにくいと考える対象者もいる.経皮吸収エストロゲン製剤よりも静脈血栓塞栓症や脳卒中を起こしやすいと考えられていたが,閉経後早期では静脈血栓塞栓症の絶対リスクは希少であり,脳卒中は増えないというコクランレビュー1)もある.また,脳卒中は低用量であれば増加しないと考えられている2).
経皮吸収エストロゲン製剤である貼付タイプとゲルタイプは,経口製剤と異なり肝臓を経由しないため血栓傾向や好炎症状態を惹起しない.経口製剤に比べ,静脈血栓塞栓症リスクを起こしにくく,脳卒中や冠動脈疾患リスクもより起こしにくい可能性がある.しかし,上述したように経口製剤でも健康な周閉経期女性では静脈血栓塞栓症や脳卒中は極めてまれであり,経口製剤の使用を否定するものではない.皮膚の過敏性,かぶれ等により使用できない対象者もいる.肥満や加齢等の血栓症の潜在的なリスクがある症例,高血圧,糖尿病,慢性炎症性疾患等血栓症と関連する基礎疾患がある対象者には第一選択と考える.ル・エストロジェル®は1プッシュでは低用量のHRT,2プッシュでは通常量のHRTとして使用できる.
黄体ホルモン製剤がHRTの有害事象(乳がんや心血管系疾患等)と関連していることが報告されている.天然型の黄体ホルモン製剤であるプロゲステロンは他剤と比べ安全性が高いことが指摘されている.光学異性体であるジドロゲステロンも安全面ではプロゲステロンとほぼ同等と考えられている.一方で子宮内膜の増殖抑制や子宮内膜症組織内の高エストロゲン環境の抑制にはメドロキシプロゲステロン酢酸エステルのほうが有効である可能性がある.海外の学会や専門家の推奨では,プロゲステロンがより安全な選択肢であるとされている.プロゲステロン製剤は内服する時間が就寝前と限定され,飲み忘れた際の融通性がない一方で睡眠障害に対し他剤より効果的である可能性がある.現時点では他剤に比べ値段が高いため,使用者にとってはこれも選択基準の一要因となり得る.
エストロゲン・黄体ホルモン配合製剤は持続的併用投与法として子宮のある対象者に用いられる.単独で使用できるため利便性が高い.更年期障害に適用があるのはエストラジオール・酢酸ノルエチステロン経皮吸収製剤である.経皮吸収型製剤のエストロゲンにおけるメリットは前出したが,黄体ホルモン製剤が経口ではなく経皮吸収であるメリットに関するエビデンスはない.使用されるノルエチステロン酢酸エステルは19ノルテストステロン誘導体エストラン系でありエストロゲン作用とアンドロゲン作用も有しているため,これに起因する副作用が出る可能性がある.臨床的な使用感であるが不正子宮出血が多い.
Copyright © 2024, SHINDAN TO CHIRYO SHA,Inc. all rights reserved.