特集 ポストコロナ時代の感染症診療
第II章 感染症診療各論
[7]泌尿器・生殖器感染症
4 細菌性前立腺炎・精巣上体炎
石川 清仁
1
1藤田医科大学ばんたね病院安全管理部感染対策室
pp.180-183
発行日 2023年3月23日
Published Date 2023/3/23
DOI https://doi.org/10.34433/dt.0000000152
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Summary
1.有熱性尿路感染症で最も頻度の高い疾患は腎盂腎炎であるが,男性患者の場合は急性細菌性前立腺炎や急性精巣上体炎を鑑別診断に入れる必要がある.細菌性前立腺炎の診断は直腸診や陰囊部の触診により行うが,前立腺液の圧出法(マッサージ)は菌血症のリスクとなり禁忌とされているので注意が必要である.
2.さらに,細菌性前立腺炎は高齢者の場合は排尿障害が誘発され,尿閉に陥ることもある.敗血症の合併など重症化しやすい病態であるため,初期治療では早期に適切な抗菌薬の投与が大切となる.
3.有熱性尿路感染症で陰囊内に大きな腫瘤を触知し,圧痛がある場合には急性精巣上体炎や精巣炎が疑われる.若年者の場合,鑑別すべき最も重要な疾患は精巣捻転であり,同疾患が否定できないときは急性陰囊症として対応(緊急整復術等)すべきである.
4.精巣上体炎の原因微生物は急性細菌性前立腺炎に準ずるが,性的活動期(14~35歳)の男性では尿道炎の原因となる淋菌やChlamydiaを念頭におく必要がある.
5.細菌性精巣上体炎の場合は,急性前立腺炎を合併していることもあるので,排尿障害や尿閉,菌血症や敗血症などの存在に注意することも大切である.
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