増刊号特集 泌尿器科治療薬マニュアル—私の処方箋
疾患別薬剤投与プロトコール
感染症
精巣上体炎
小島 弘敬
1
1日赤医療センター泌尿器科
pp.117-119
発行日 1993年3月30日
Published Date 1993/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900865
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精巣上体炎の起因菌と鑑別診断
男子尿道は尿路と精路との体外への開口部であり,1対の射精管と多数の前立腺導管が合流している。尿道には常在菌が存在し,通過障害,異物などの存在により菌量が増加する。男子尿道には移行,円柱,重層の各上皮が存在するが,尿道円柱上皮に外来性に感染する微生物に淋菌,Chlamydia trachomatis(CT)がある。尿道にグラム陰性桿菌,淋菌,CTが増殖する場合,精路に管内性,上向性に感染が拡大して精巣上体炎を生じうる。精巣上体炎の起因菌は尿路に留置カテーテルなどの異常のある高齢者ではグラム陰性桿菌が,若年者では淋菌,CTが多い1)。
未治療の場合CT以外の細菌は初尿,尿道スワブ,精液から容易に分離培養可能である。CT精巣上体炎では菌量に多寡はあるが尿道にCTは必ず存在し,初尿,尿道スワブ,精液からEIA,DNAプローブ,PCRなどにより検出可能である。厳密には尿道また尿道を経由して採取される初尿,精液から検出される微生物が精巣上体炎の起因菌であるとは限らず精巣上体の穿刺による直接の検出が必要であるが,臨床的にはグラム陰性桿菌,淋菌,CTが尿道から検出される場合,精巣上体炎の起因菌とするものが多い。問題となるのは抗菌剤使用後の症例で,この場合細菌学的検出の信頼性は低い。
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