Special feature ハイリスクと闘う新生児医療の感染対策
■Risk & Control 1 新生児医療の病原体リスクとその対策
❶新生児医療の感染症リスク
-―病原体の種類から症状・治療・予防まで
野崎 昌俊
1
1地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター 新生児科/感染症科 副部長
pp.281-286
発行日 2021年10月15日
Published Date 2021/10/15
DOI https://doi.org/10.34426/ict.0000000263
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新生児は感染症に対する種々の危険因子がある。新生児側の危険因子として,①免疫機能が未熟であること,②皮膚や粘膜面が機能的・構造的に未熟であること,③常在細菌叢が未形成で不安定であることがあげられる。新生児の免疫は好中球機能,補体機能,細胞性免疫,液性免疫のいずれも未熟である。新生児の皮膚は,幼児よりも真皮,表皮の厚さが薄く,さらに早産児では,表皮と真皮の接合部を結合している係留線維の線維量が少ない。このため,特に早産児の皮膚は薄く,脆弱で透過性が高いので,皮膚損傷が容易に起こり病原体の侵入門戸となりやすい。胎児は子宮内では無菌状態であるが,出生後,母体由来,または環境由来の細菌が体の各部に定着して常在細菌叢を確立していく。新生児では細菌叢の定着が不十分で感染防御機構が未熟なため,抗菌薬投与や細菌の侵入により,気道,腸内,皮膚などに容易に病原性のある細菌叢が形成され,それらが感染症の原因となってしまう。次に,新生児の周囲環境の危険因子としては,人工呼吸器やカテーテルなどの医療器具,高温多湿な保育器などの環境器具,侵襲性の医療処置などがあげられる。新生児集中治療室(NICU)では複数の医療従事者による処置やケアが頻回であり,手指を介した病原体の伝播が起こりやすい。また,新生児医療で使用される広域抗菌薬は,耐性菌の発生,常在細菌叢の定着の遅延,真菌感染など,感染症に対する危険因子となる。新生児医療ではこれらの生理的な特徴と周囲環境の特性を踏まえた感染症診療が必要である。
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