Medical Topics
グラム陰性桿菌性ショック,他
Y.O.
pp.80-81
発行日 1971年4月1日
Published Date 1971/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661915999
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従来感染症といえばグラム陽性の球桿菌によるもの(たとえば黄色ブドウ球菌〉が重視されていた。しかし最近ではグラム陰性桿菌(大腸菌,変形菌,肺炎桿菌,緑膿菌,バクテロイデス,エンテロバクター)が一般感染症に占める割合が増加している.筆者らが,継続的に調査している阪大病院の尿路感染症病因菌においても,年々グラム陰性桿菌が増加し,入院・外来とも約90%に達している。このような事情を反映して,菌血症,敗血症の病因菌にもグラム陰性桿菌が登場してきた。
この敗血症はショック症状を呈し,治療に抵抗して死亡率が高率(40〜100%)である点たいへん特異で注目さるべきものである。さらに皮膚,尿路,胆道,呼吸器など局所に感染があって,菌血症が必ずしも証明されない症例でも,ショックが生じうることが報告されている。すなわちグラム陰性桿菌の細胞壁にある燐脂質多糖類がエンドトキシンとして働いて,血圧低下,末梢循環虚脱などをきたすと考えられる。臨床的には血液疾患と非血液疾患で,ショックの誘発因子,原因菌,腎不全,肝不全の発生率が異なるといわれているが,いずれにせよグラム陰性桿菌感染が疑われる患者で,これに抗生物質,副腎皮質ステロイド,抗癌剤などを投与した後,手術とか,尿路,呼吸器,胆道などへの器具操作後,外傷,熱傷に受傷した後にショックをみた場合は,グラム陰性桿菌性ショックとみなし,強力な治療と看護にとりかからねばならない。
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