今月の主題 実地医のための臨床細菌学
問題になってきた起炎菌の分離・同定
ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌
藪内 英子
1
1関西医大微生物学
pp.962-965
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207940
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
空気環境で生育できる菌は,無酸素環境(嫌気状態)でブドウ糖を分解する発酵菌と,この条件ではブドウ糖を分解しない非発酵菌に分けられる.発酵菌は通性嫌気性菌,非発酵菌は好気性菌である.この発酵と非発酵の区別はグラム陰性桿菌ではとくに重視されており,分類および同定のための主要性状の一つとされている(表1).Escherichia coli,Vibrio cholerae,Haemophilus influenzaeなどは発酵菌,Pseudomonas aeruginosa,Alcaligenes faecalisなどは非発酵菌である.非発酵グラム陰性桿菌の中には古くからヒトの病原菌として知られているBordetella pertussis(百日咳菌)やヒトと動物の共通の病原菌であるBrucella sp.,Francisella tularensis(野兎病菌)のように,血液などを加えた特殊培地でないと生育しないものもある.けれども,今日一般に非発酵グラム陰性桿菌または非発酵菌と呼ばれているのはPseudomonas aeruginosa(緑膿菌)など普通培地に生育する菌種,菌属である.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.