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海外で治療歴のある患者の耐性菌のリスク
外国人が日本へ来日する,あるいは邦人が海外へ渡航する数は年々増えており,観光庁による2017年度の報告ではそれぞれ2,800万人,1,700万人を超えている。それに伴い,外国人が日本の病院に入院する機会や,邦人が海外で医療機関を受診したのちに日本の病院に入院する機会も増えている。海外の医療機関と日本の医療機関では耐性菌の疫学的状況が異なる。海外で医療を受けた患者は日本に在住している患者に比し,より高頻度に基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌やカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE),カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)を保菌している可能性がある。更に,日本では検出が稀なタイプのCPE/CREやその他の高度耐性菌を保菌するリスクもある。実際,国立国際医療研究センター(当センター)で行った研究では,1年以内に海外の医療機関へ入院した患者について入院時に耐性菌スクリーニングを行うと,ESBL産生菌(26.1%),CPE(4.5%)と高率に保菌が認められた1)。
高度耐性菌を保菌した患者が日本の病院に入院し,院内の水平伝播の原因となったケースがいくつか報告されており,CRE/CPEによるものも報告されている。例えば,2014年に欧州から持ち込まれたバンコマイシン耐性腸球菌/多剤耐性Acinetobacter baumannii/KPC型CPE型肺炎桿菌の事例などである2)。早期発見と感染制御によって発症者はいなかったものの,2名のカルバペネム耐性A. baumannii,3名のカルバペネム耐性Klebsiella pneumoniaeの保菌者,更に院内数ヵ所のA. baumanniiによる環境汚染が認められている。
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