Editorial―今月のことば
“時計を一つ持っている人は,何時だかわかる.時計を二つ持っている人は,正確な時間がわからない.”(シーガルの法則)
下澤 達雄
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1国際医療福祉大学大学院 医学研究科 医学専攻 臨床医学分野 臨床検査学
pp.113-113
発行日 2025年2月15日
Published Date 2025/2/15
DOI https://doi.org/10.32118/mt53020113
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新たな自己複製能力をもつmRNAを用いた新型コロナウイルスに対するワクチンについて,その安全性に対する根拠が希薄な投稿がSNS上で相次いだことは記憶に新しい.ワクチンについては,今回に限らず種痘の時代からさまざまなデマゴーグや誤解が広がり,そのたびに患者へ科学的根拠をわかりやすく説明して指導することが繰り返されてきた.なぜ,このようなことが繰り返されるのであろうか? さまざまな分析,解釈があると思う.専門知識の不足や,特定の集団内で共有される意見が強調されて他人の意見に耳を貸さなくなること,不安をあおる情報が印象に残りやすいことなどは理由としてよくあげられるものだが,特に医療機関や政府に対する不信感が強いことも要因であろう.また,過去の医療倫理問題が影響することも多い.この不信感を払拭するために臨床検査の立場でできることは何か? それは信頼される検査結果を報告することであろう.臨床検査の信頼度を高めるために我々が行っていることとしては,検査手順の標準化,適切な機器の導入とその精度の確保,要員教育・トレーニング,検査結果の再評価(特に異常値の確認検査や二重検査),検査結果や手順を公開し外部から評価を受けるシステムの構築,そして品質管理システムの実施がある.
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