特別寄稿 実践から病院情報システムの功罪とそのあり方を考える
4.データ利用は二つの顔を持つ(その1)
田原 孝
1,2,3
,
日月 裕
4
1日本診療録管理学会
2日本診療情報管理機構
3日本福祉大学
4市立豊中病院麻酔科集中治療部
pp.498-504
発行日 2000年6月1日
Published Date 2000/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903016
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今なぜアウトカムなのか—診療録は情報になるか?
かつて血友病患者のエイズが問題になった時,厚生省より各病院に非加熱凝固因子製剤の過去の使用状況を調べるようにという通達があった.この通達に対して,各病院はどのようにして調べたのであろうか?診療録の保存義務期間を既に過ぎてはいたが,多くの病院では診療録はまだ保存されていた.この診療録から非加熱凝固因子製剤の使用状況を調べた病院はどれほどあったのであろうか? ある病院では,たまたまある医師が非加熱製剤を使用していた患者の名前を覚えていたため患者を特定できたと聞いたことがある.
実際,10万冊を超えるような診療録を一つずつ調べて,患者を特定する作業は気が遠くなるような話である.ところが,既に承知のように各病院へ納入された製剤の量は各業者のデータにより,日付まで含めてわかっていた.この事実は,病院の情報管理能力が一般企業に比べていかにお粗末かをまざまざと見せつけている.
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