Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
内容のポイント Q&A
Q1 定義や目的は?
Geriatric Oncology(老年腫瘍学)とは,高齢がん患者の診療において,高齢患者が抱える特徴を把握し,「がん治療のリスクとベネフィットに基づき,どのように治療方法を個別化するべきか」「患者の健康状態を把握し,治療に役立てるためにはどうするか」「がんや治療が患者の加齢にどのような影響を及ぼすのか」といった臨床上の課題を解決するための学問領域である.
Q2 がん診療における位置づけ,ベストプラクティスは?
がん治療開始前よりフレイルの状態にある高齢患者は,化学療法・放射線療法の完遂率の低下,治療関連毒性の増大,術後合併症の増加,死亡率の増大等のリスクが高い.そのため,高齢がん患者の診療においては,治療開始前に高齢者機能評価を実施し,その結果を踏まえた治療方針の決定と,介入可能な要素に対してはリハビリテーションを含む多職種チームによる専門的な介入を行うことが必要不可欠である.
Q3 リハビリテーション専門職の役割は?
高齢がん患者の診療において,治療開始前に高齢者機能評価によりフレイルの有無や程度を評価し,治療方針の決定に役立てるとともに,フレイルと判定された場合には,身体機能・精神機能,および日常生活活動(activities of daily living;ADL)や手段的日常生活活動(instrumental activities of daily living;IADL)の改善を目的に,できるだけ早期からリハビリテーションを行うことが重要である.
Q4 学術的な位置づけ,エビデンスは?
米国臨床腫瘍学会のガイドラインでは,高齢がん患者に対して,治療開始前に高齢者機能評価として,①身体機能,②併存疾患,③転倒,④抑うつ,⑤認知機能,⑥栄養状態の評価を行うことを推奨している.高齢者機能評価は,化学療法の有害事象や術後合併症,生命予後の予測,また,がん治療の意思決定にも有用である.一方で,高齢者機能評価にて何らかの問題が抽出された患者に対する多職種チーム介入効果については,近年その有用性が少しずつ明らかになってきているものの,エビデンスはいまだ十分ではない.
Q5 今後の展開は?
わが国では,高齢がん患者の日常診療において,高齢者機能評価を実施している施設は残念ながらまだ多くはない.今後は,高齢者機能評価の導入が普及し,その結果に基づいた治療方針の決定と多職種チーム介入によるサポート体制の構築を行うとともに,そのエビデンスの確立が推進されることが望まれる.

Copyright© 2025 Ishiyaku Pub,Inc. All rights reserved.