連載 食塩にまつわる新知見TOPICS③
食塩と高血圧の再考
-「体液貯留」から「水分喪失ストレス」への視座転換
北田 研人
1
Kento Kitada
1
1香川大学医学部 薬理学
pp.356-361
発行日 2025年9月1日
Published Date 2025/9/1
DOI https://doi.org/10.32118/cn147030356
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はじめに
本連載では,食塩にまつわる従来の定説を覆す可能性を秘めた新しいコンセプトを紹介してきた.第1回では,「健康であっても体内のナトリウム量は一定ではなく,皮膚や筋肉がその貯蔵庫として機能している」可能性を概説した.続く第2回では,「食塩を多く摂取すると,体はナトリウム利尿による水喪失に対抗して水分を保持するために尿素を産生し,結果として飲水量が減少する」という,従来の定説とは逆の現象を説明した.
最終回となる本稿では,とくに第2回の新コンセプトを基に,大きく2つのテーマを掘り下げたい.1つ目は,「高食塩摂取は尿素産生亢進に関連して,エネルギーを消費する異化状態を引き起こし,尿量を変えずに飲水量を減らす」という第2回で取り上げた新概念について,これを支持する,あるいは一見すると反証しているようにみえる近年の臨床研究を交えながら,既存概念の変革の必要性を議論する.2つ目は,これまでの議論を総括し,食塩の過剰摂取が体に与える影響を,従来の「ナトリウム・体液の蓄積」という視点から,「ナトリウム利尿にともなう水分喪失ストレス」という新しい視座からとらえ直し,食塩摂取と血圧変化の関連性について,その真のメカニズムを考察したい.

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