ズームアップ
ヒトの水必要量に関するエビデンスの最新動向と今後の展望
渡邉 大輝
1
,
井上 裕美子
1
Daiki Watanabe
1
,
Yumiko Inoue
1
1早稲田大学 スポーツ科学学術院
pp.372-376
発行日 2024年3月1日
Published Date 2024/3/1
DOI https://doi.org/10.32118/cn144030372
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はじめに
水はすべての生物にとって不可欠な物質であり,ヒトの全体重の約50~70%を占めている1).ヒトは体水分を維持するための恒常性を備えており,他の霊長類よりも1日当たりの水分摂取量が少なくなるように進化してきた2).しかし,食品や飲料に由来する水分を数日間消費しないだけで致命的な問題が引き起こされる3).そのため,水分の喪失によって体水分量のバランスが乱れた場合,ヒトは主に喉の渇きと空腹を感じることで食品や飲料から水分を摂取するように調節する4).したがって,適切な水分摂取はヒトの生命および健康維持のために重要である.
ヒトの生体内への水流入源は,食品や飲料からの総摂取水分(pre-formed-water;前形成水),栄養素の代謝過程で生成される代謝水,呼吸時に体内に取り込む呼吸水,皮膚から体内に取り込む皮膚水がある5).一方で,体外への水流出は尿,不感蒸泄,汗,便などからの喪失がある4).とくに,外気温が高い環境では発汗によって水分の喪失が高まるため,1日当たりの水の必要量は増加する3).近年,地球温暖化や持続可能な開発目標(SDGs)により水資源の不足や個々人の水必要量が注目されている.
本稿では,疫学研究から明らかとなったヒトの水必要量に関するエビデンスの最新動向と今後の展望について概説する.
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