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第5土曜特集 心不全診療の未来戦略――ゲノム,AI,多臓器連関が拓く新時代
多臓器連関という視点から捉える心不全
神経–免疫連関を介した腎保護と血圧制御
-――心腎連関病態の新たな治療標的
Neuro-immune interactions in renal protection and blood pressure regulation
――A novel therapeutic target in cardiorenal syndrome
梅根 隆介
1
,
井上 剛
1
Ryusuke UMENE
1
,
Tsuyoshi INOUE
1
1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科内臓機能生理学
キーワード:
心腎連関
,
自律神経
,
神経–免疫連関(neuro-immune interaction)
,
コリン作動性抗炎症経路(CAP)
,
オプトジェネティクス
Keyword:
心腎連関
,
自律神経
,
神経–免疫連関(neuro-immune interaction)
,
コリン作動性抗炎症経路(CAP)
,
オプトジェネティクス
pp.836-840
発行日 2025年11月29日
Published Date 2025/11/29
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295090836
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心腎連関は,心不全や急性腎障害(AKI)の予後を左右する重要な臓器間ネットワークであり,従来は血行動態や体液調節を中心に理解されてきた.しかし近年,神経系と免疫系が相互に作用して腎保護や血圧制御に関与する “神経–免疫連関” が注目されている.代表的経路として,副交感神経を介するコリン作動性抗炎症経路(CAP)があり,迷走神経刺激によりマクロファージのα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7nAChR)を介して炎症性サイトカイン産生が抑制され,AKIモデルで腎保護効果が示されている.また,延髄C1ニューロンを介した交感神経経路や腎交感神経の選択的刺激も,免疫細胞や尿細管細胞を標的として腎障害を軽減することが明らかになっている.さらに,AngⅡ-salt高血圧モデルにおいては自律神経が高血圧進展に寄与する一方,条件によっては自律神経と免疫系の相互作用が降圧効果を示すことも示唆されている.これらの知見は,心腎連関を循環・体液異常にとどまらない多臓器連関病態として捉え,神経–免疫連関を標的とした革新的治療戦略の開発につながる可能性を示している.

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