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第5土曜特集 心不全診療の未来戦略――ゲノム,AI,多臓器連関が拓く新時代
多臓器連関という視点から捉える心不全
心拍応答をつかさどる脳内機構
Neural modulation of heart rate control
吉本 愛梨
1
,
池谷 裕二
2
Airi YOSHIMOTO
1
,
Yuji IKEGAYA
2
1Stanford University,Department of Biology
2東京大学大学院薬学系研究科薬品作用学教室
1Stanford University,Department of Biology
キーワード:
バイオフィードバック
,
皮質–視床経路
,
心拍数調節
Keyword:
バイオフィードバック
,
皮質–視床経路
,
心拍数調節
pp.830-835
発行日 2025年11月29日
Published Date 2025/11/29
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295090830
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バイオフィードバックは通常,意識的に制御できない生理学的活動を認知・調節可能にするための訓練手法であるが,その背後にある神経基盤は依然として明らかになっていない.本研究では,その神経機構を解明するための動物モデルとして,自由行動下のラットを用いた心拍フィードバック系を新たに開発した.ラットは30分以内に心拍数の低下を学習し,3時間の訓練を5日間繰り返すことで,最大で約50%の心拍数低下を達成した.さらに,前帯状皮質(ACC)から視床腹内側核(VMT)へ投射する神経を不活性化すると,このフィードバックによる徐脈反応が阻害されたことから,皮質–視床経路の関与が示唆された.ACCからVMTへと投射する神経群は訓練中に顕著なシータ帯域の振動を示し,同経路へのシータ周波数の刺激によって徐脈が誘導されることも確認された.加えて,視覚的に提示されたシータ周波数の刺激によっても同様の心拍数低下が引き起こされることから,非侵襲的にシータ振動を増強する手法が,ラットおよびヒトにおける心拍フィードバック訓練の効果を高める可能性があると考えられる.神経経路の下流構造として,ACC由来の入力を受けるVMTニューロンは視床下部背内側核(DMH)に軸索投射しており,DMHニューロンはさらに迷走神経核(Amb)へと投射していた.これらの結果から,意図的な心拍数調節を実現するための中枢–末梢神経連関を含む統合的な神経回路が示唆された1).

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