Japanese
English
特集 網膜の構造と機能
総説
杆体光応答のイオン機構
Ionic mechanisms ofr the photoresponses in rods
Luigi Cervetto
1
,
田内 雅規
2
1Laboratorio di Neurofisiologia del Consiglio Nazionale delle Ricerche
2東京女子医科大学第2生理学教室
pp.168-172
発行日 1979年6月15日
Published Date 1979/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903318
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視覚情報の受容過程はまず網膜の視細胞(杆体と錐体)の外節における光受容のために特殊化した構造中の視物質による光量子の吸収によって始まる。電気生理学的研究によれば,脊椎動物網膜の視細胞は,暗時,一般の神経細胞と比べてその膜電位はより小さく,光刺激を与えた場合には過分極方向に向い,一般神経細胞の静止膜電位のレベルに近づく傾向のあることが知られている8)。また,通電実験による膜の電流—電圧特性からみると,杆体と錐体は共に光照射時に膜抵抗の増大があることから,暗時,視細胞はイオン透過性が高くて脱分極しており,光照射によってその透過性が減少する結果過分極が起ると考えられる1,5,9)。細胞内誘導電位を指標とした外液のイオン置換実験の結果,Na+の除去により光応答が可逆的に消失することが報告された3,4)。これは,暗時に視細胞外節はNa+に対し高い透過性を有するが光照射によってそれが減少するという仮説を支持するものである7)。
視細胞膜のコンダクタンス変化が光応答の発現にいかに関っているかを明らかにしてゆくために,Baylor & Fuortes1)はつぎのような仮定を行った。それは,暗時に杆体および錐体の外節膜はイオンを透過し得る状態にあり,コンダクタンスは高いが,視物質の光量子吸収は膜に作用してイオンチャネルをブロックするような物質の産生を促し,コンダクタンスを減少させるというものである。
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