Japanese
English
第5土曜特集 心不全診療の未来戦略――ゲノム,AI,多臓器連関が拓く新時代
多臓器連関という視点から捉える心不全
自然免疫記憶が引き起こす心血管病
Innate immune memory as a driver of cardiovascular diseases
中山 幸輝
1,2
Yukiteru NAKAYAMA
1,2
1東京都医学総合研究所
2東京大学医学部附属病院循環器内科
キーワード:
心不全
,
自然免疫記憶
,
造血幹細胞(HSC)
Keyword:
心不全
,
自然免疫記憶
,
造血幹細胞(HSC)
pp.819-824
発行日 2025年11月29日
Published Date 2025/11/29
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295090819
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
心血管病の発症・進展に単球・マクロファージを中心とした自然免疫系の関与が大きいことは明らかであるが,慢性炎症疾患とも称されるこれらの病態形成では,局所において,または臓器間連携を経て修飾された免疫応答の理解が必要である.自然免疫細胞は一度刺激を受けると,細胞内代謝やエピゲノム変化を介して,次なる刺激に対するサイトカイン発現が修飾される.このような自然免疫記憶が,さまざまな動脈硬化リスク因子によって直接引き起こされることが報告されている一方,造血幹細胞(HSC)レベルでも自然免疫記憶が形成され,骨髄球系への分化が偏ったり(ミエロイドシフト),分化細胞におけるサイトカイン発現が増強したりする.疾患レベルでも,心不全や脳卒中になるとHSCに自然免疫記憶が形成され,心機能障害を増悪させることがわかった.ダイナミックな免疫メカニズムの解明が,単独のサイトカインを標的とした抗炎症治療を超えた,新たな心不全治療につながると考えられる.

Copyright © 2025 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.

