特集 意外と知られていない⁉ 自科の常識・他科の非常識
第1章:呼吸器
吸入抗原によって肺炎を引き起こすことがある
下田 真史
1
1結核予防会複十字病院呼吸器内科
キーワード:
過敏性肺炎
,
好酸球性肺炎
,
スプレー肺
,
ヒューム
,
吸入抗原
Keyword:
過敏性肺炎
,
好酸球性肺炎
,
スプレー肺
,
ヒューム
,
吸入抗原
pp.373-375
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_373
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吸入抗原による肺炎
さまざまな吸入された物質は時に肺炎を引き起こすことがある.その代表が過敏性肺炎(hypersensitivity pneumonitis:HP)であり,環境中の真菌や細菌,キノコの胞子,鳥の羽・糞などによりⅢ/Ⅳ型アレルギーを引き起こすとされている1).そのほかには好酸球性肺炎2),スプレー肺(waterproofing spray-associated pneumonitis:WAP)3),ヒューム肺4)などがあげられ,それ以外にも多数の有機物・無機物による化学性肺炎が報告されている5~10).それらの多くは予後良好であり,自然に改善することも多いが,ステロイド治療を要する症例もある3).それぞれの疾患ごとに原因となり得る抗原があるが,その種類はかなり多岐にわたっている.たとえば,代表的なHPとして夏型過敏性肺炎,住宅関連過敏性肺炎,鳥飼病,農夫肺,加湿器肺が知られているが,それぞれで異なる原因抗原が報告されている1).また,まれなHPとしてmushroom worker’s lung(キノコ栽培による胞子の吸入によるもの),hot tub lung(浴槽のジェット噴射に含まれるMycobacterium avium complexによるもの)など30種以上のサブタイプが報告されている1).そのため呼吸器症状を呈するすべての初診患者に,吸入抗原による肺炎を疑って診察を行うのは現実的とはいえない.吸入抗原による肺炎の種類と臨床的な特徴を把握し,必要に応じて精査を行うことが重要と考える.
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