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特集 電子顕微鏡が照らす医学研究の最前線
マクロからミクロレベルに至る脳構造変化の階層的解析を用いたジスキネジアの病態メカニズム解明
Elucidation of the pathophysiology of dyskinesia through hierarchical analysis of brain structural changes from macro to micro levels
阿部 欣史
1
,
田中 謙二
1
Yoshifumi ABE
1
,
Kenji TANAKA
1
1慶應義塾大学医学部先端医科学研究所脳科学研究部門
キーワード:
ジスキネジア
,
淡蒼球(GPe)
,
神経終末
,
小胞GABAトランスポーター(VGAT)
,
ドパミン
Keyword:
ジスキネジア
,
淡蒼球(GPe)
,
神経終末
,
小胞GABAトランスポーター(VGAT)
,
ドパミン
pp.580-584
発行日 2025年11月15日
Published Date 2025/11/15
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295070580
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レボドパ誘発性ジスキネジア(LID)と遅発性ジスキネジア(TD)は,それぞれ異なる薬剤の長期使用によって引き起こされる副作用であり,原因や治療対象は異なるにもかかわらず,共通して不随意運動という症状を示す.本研究では,この類似した病態の背景にある神経構造変化を明らかにするため,MRIによる全脳マクロ解析と,超解像顕微鏡および電子顕微鏡によるミクロ解析を組み合わせた階層的手法を用いた.その結果,両モデルマウスにおいて,淡蒼球(GPe)の線条体中型有棘ニューロン(MSN)の神経終末で小胞GABAトランスポーター(VGAT)の過剰発現と,MSN神経終末・標的細胞の肥大化が共通して認められた.さらに,VGATの発現量を操作する実験により,この構造変化がジスキネジアの原因であることが実証された.加えて,病態形成の背景には,ドパミンD2受容体シグナルの低下(1st hit)に加え,ドパミン濃度の周期的変動(2nd hit)が構造可塑性を誘導する “Two-Hit仮説” が提唱された.この成果は,構造解析技術によって病態の因果構造を明らかにし,基礎と臨床をつなぐ新たな視点を提供するものである.

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