Japanese
English
特集 神経系による呼吸・循環調節――ホメオスタシスとアロスタシスによる制御
呼吸による脳機能制御の新たな視点
-――時間情報の制御因子としての役割
Perspective on respiratory modulation of brain function
――A potential role in temporal coding
中村 望
1
Nozomu H. NAKAMURA
1
1兵庫医科大学医学部生理学生体機能部門
キーワード:
吸息開始
,
記憶形成(エンコーディング)
,
アロスタシス
,
内的セットポイント
Keyword:
吸息開始
,
記憶形成(エンコーディング)
,
アロスタシス
,
内的セットポイント
pp.269-275
発行日 2025年10月25日
Published Date 2025/10/25
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295040269
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
呼吸は,これまで生命維持という代謝の観点から論じられてきたが,近年,高次脳機能においても重要な役割を果たすことが明らかになった.本稿では,筆者らが明らかにした呼吸と脳機能に関する知見を出発点として,生体の適応能力と,そのなかでの呼吸の役割について考察する.生体は,状況の変化に応じて内的セットポイント(internal setpoint)を推移させ,変動する環境の中で安定した状態を保つ.このような能力をアロスタシス(allostasis)という.その動的な状況下で,ある種の混沌に乗じて,既存の身近な構成因子が新たな機能として再利用されることは,外適応(exaptation)で知られるように,生体機能において十分に起こりうる.今回,その部品のひとつとして注目するのが呼吸である.呼吸は,初期段階の記憶形成(エンコーディング)だけでなく,ひらめき体験(aha moment)なども含めて,いかにして時間情報に関わる制御因子として役割を果たすかについて議論する.

Copyright © 2025 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.

