Japanese
English
特集 関わり合う脳
Ⅰ.他者と関わる脳
環境の変化に適応する脳—アロスタシスと内受容感覚を切り口として
The brain's system for adapting to environmental changes:a short review from the perspective of allostasis and interoception
寺澤 悠理
1
Terasawa Yuri
1
1慶應義塾大学文学部心理学専攻
キーワード:
内受容感覚
,
アロスタシス
,
受容と調整
,
予測的制御
,
身体
Keyword:
内受容感覚
,
アロスタシス
,
受容と調整
,
予測的制御
,
身体
pp.31-34
発行日 2025年2月15日
Published Date 2025/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037095310760010031
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アロスタシスとは,生体がこれから経験する可能性がある状況に対する身体内部環境の予測的な調節を指し,なるべく身体のエネルギーを効率よく利用する行動選択を可能にするためのシステムである1)。このシステムは,恒常性を維持するホメオスタシスや知覚における予測的符号化と深く関与しており,生体の外部,あるいは内部に起因する情報から,最も環境への適応度が高い行動を予測的に選択する基盤を提供している。ヒトが生活するうえで経験する情動や他者との関わり合いの文脈でも,状況に応じた行動の選択やその調整にアロスタシスは重要な役割を果たしていると考えられる。多様な社会環境のなかで他者と相互作用しながら自身の目的を達成していくためには,個体が持つエネルギーを効率よく使い,その配分や行動を細やかに調整する必要があるからである。
本稿では,身体内部の感覚である内受容感覚を媒介として,状況に応じた身体状態の調整機構としてのアロスタシスの観点から感情や社会認知を捉える議論を紹介したい。
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