Japanese
English
特集 “All You Need is Synapse” シナプスを標的とした創薬に向けて
シナプス誤接続による慢性疼痛およびその治療戦略
Chronic pain caused by synaptic misconnection and treatment strategies
小泉 修一
1,2
,
鍋倉 淳一
3
Schuichi KOIZUMI
1,2
,
Junichi NABEKURA
3
1山梨大学大学院総合研究部医学域薬理学講座
2同山梨GLIAセンター
3自然科学研究機構生理学研究所
キーワード:
アストロサイト
,
シナプス再編
,
神経ネットワーク再編
,
神経障害性疼痛
,
ミクログリア
Keyword:
アストロサイト
,
シナプス再編
,
神経ネットワーク再編
,
神経障害性疼痛
,
ミクログリア
pp.135-138
発行日 2025年10月11日
Published Date 2025/10/11
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295020135
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シナプスの新生や刈り込みによる “シナプス再編” は,脳の可塑性獲得に不可欠なプロセスである.従来,これは神経細胞の自律的な機構に依存すると考えられてきたが,実際にはグリア細胞が極めて重要な役割を担うことが明らかとなっている.慢性疼痛,特に神経障害性疼痛モデルを用いた研究により,病態時には大脳皮質一次体性感覚野(S1)においてアストロサイトの代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)を介したCa2+シグナルが亢進し,シナプス新生因子が放出されることが示された.その結果,無秩序なシナプス再編が生じ,神経ネットワークが誤接続されることが本疾患の主要な病態機序であった.したがって,アストロサイトは本疾患の有望な治療標的である.実際,化学遺伝学的手法(DREADD)や経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)によりアストロサイトのCa2+シグナルを制御する戦略を開発したところ,誤接続した神経ネットワークを適切に再構築でき,神経障害性疼痛の治療に有効であることが確認された.

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