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特集 感覚器フレイルの予防と対策
感覚器フレイルが身体機能低下に与える影響とそのメカニズム
The influence of sensory frailty on physical decline and its mechanisms
稲富 勉
1
Tsutomu INATOMI
1
1国立長寿医療研究センター感覚器センター
キーワード:
感覚器フレイル
,
フレイル
,
サルコペニア
,
転倒リスク
Keyword:
感覚器フレイル
,
フレイル
,
サルコペニア
,
転倒リスク
pp.1064-1069
発行日 2025年9月13日
Published Date 2025/9/13
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294111064
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視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚といった感覚器情報は人間生活や社会活動の基本となるため,高齢者の身体機能低下(フレイル)の進行と密接に関連する.感覚器の機能は老化による感覚器受容体の機能低下に加え,中枢への伝達機能低下,さらには高次中枢自体の脳機能低下などが複合的に関与する.また,感覚機能の低下は個別機能の低下のみならず,高齢者の身体機能低下や生活の質(QOL)に直接的・間接的に影響するため「感覚器フレイル(sensory frailty)」という概念が重要である.感覚器フレイルは,重複障害から,身体機能低下,認知機能低下,転倒リスクの増加,社会的孤立,抑うつなど高齢者QOLに幅広く影響する.視覚障害は歩行速度,転倒リスクと強く関連し,聴覚障害はコミュニケーションの困難や社会的孤立さらに認知症の原因となる.嗅覚・味覚障害もサルコペニアの原因となる.感覚器フレイルが身体機能低下を引き起こすメカニズムは,多面的かつ複合的であり,高齢者の感覚器機能を包括的に把握し,予防や治療を行うことが重要である.高齢者社会においては感覚器障害の予防医学や感覚器フレイルの早期評価と多面的介入が健康寿命延伸の鍵となる.

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