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第5土曜特集 マルチオミクスが解き明かす疾患の本質――統合的アプローチによる新たな知見
総論:マルチオミクス解析の基盤と技術
集団ゲノミクス研究の最新動向
Recent trends in large-size genomics research
鎌谷 洋一郎
1
Yoichiro KAMATANI
1
1東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑形質ゲノム解析分野
キーワード:
集団ゲノム解析
,
国際データ共有
,
ゲノムワイド関連研究(GWAS)
Keyword:
集団ゲノム解析
,
国際データ共有
,
ゲノムワイド関連研究(GWAS)
pp.720-724
発行日 2025年5月31日
Published Date 2025/5/31
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293090720
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DNAシークエンサーは,ショートリードからロングリードへと質的に進化するばかりでなく,ますますコストが低下する傾向にある.また,集団ゲノム解析においては,ヒトゲノム全塩基のデータ化を目的とする全ゲノムシークエンス(WGS)を,大規模集団について実施することが実現化しているほか,シークエンサーと同様に有用なSNP(一塩基多型)アレイもさらに安価になっている.それらとも合わせ,世界的にバイオバンクなどのヒト集団ゲノムデータのサンプルサイズが大幅にサイズアップしており,オミクスなどのデータも厚みが増している.これらの大規模データを用いることで,ゲノムワイド関連研究(GWAS),データ駆動型のメカニズム推論,遺伝的リスクスコアの開発による社会実装に向けた研究が実施されている.さらに近年は,国際的なデータ共有が大きな話題となっている.本稿では,これらのヒト集団のゲノミクス・データ,とりわけがんや難病というよりは,より一般集団に近いゲノムコホートという文脈において,複雑性疾患を中心とした筆者のスコープの範囲における最新動向を整理する.ところで筆者は,同様の表現型を示すが単一遺伝子型と多因子型を併せ持つ疾患を “複雑性疾患” とよぶことにしている.本稿でのこれらの用語の意味合いは,この定義から理解できるように述べた.

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