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特集 ストレス応答の分子メカニズム――最新知見と臨床応用への展望
はじめに
Introduction
武川 睦寛
1
Mutsuhiro TAKEKAWA
1
1東京大学医科学研究所分子シグナル制御分野
pp.569-569
発行日 2025年5月17日
Published Date 2025/5/17
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293070569
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- Abstract 文献概要
生命は,外的・内的環境の変化に適応して恒常性を維持するため,ストレス刺激に対する多様な感知・応答機構を進化のなかで創出し,洗練させてきた.温度や浸透圧,pHの変化,酸化ストレス,DNA損傷,異常タンパク質の蓄積などに代表される多彩なストレス刺激に対して,細胞レベルで適切に応答することで,組織や個体の恒常性が維持されている.このような生体のストレス応答は,翻訳後修飾,転写制御,代謝調節などの多階層にわたる情報伝達システムによって巧みに制御されており,それらが相互に連関して複雑なネットワークを形成することで細胞運命が決定づけられている.たとえば,ユビキチン修飾系はストレス応答シグナルの選択的活性化を制御し,小胞体ストレス応答はタンパク質の恒常性維持を担っている.また,酸化ストレスやDNA損傷ストレスに対する応答は,細胞の生存戦略を左右し,過度なストレスの蓄積は細胞老化やアポトーシスを誘導する.さらに,液-液相分離によって形成される細胞内の非膜構造体がストレス応答の制御に深く関与することも明らかになっており,新たな制御機構として強く注目されている.
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