特集 「ヒヤリ・ハット」報告を看護事故防止に役立てる—方法とその考え方
はじめに
川村 治子
1
1杏林大学保健学部
pp.1096-1098
発行日 1999年12月1日
Published Date 1999/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905979
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施設をこえて7〜8割が共通した背景を持つ「ヒヤリ・ハット」報告
「ヒヤリ・ハット」報告に私が関心を持ったのは約2年前のことです.ある施設の看護部にうかがった折,いただいた「ヒヤリ・ハット」報告とほぼ同じ報告を,後日別の施設でもみつけたことがきっかけです.ひょっとすると人は似たようなエラーをおかすのではないか……と.看護業務は共通した要素が多く,施設の病床規模や診療機能が似ていれば看護職員数も大差がありません.看護システムや業務内容も類似したところが多いと思います.したがって,エラーが生じやすい箇所や背景も,案外とよく似ているのではと感じたのです.
闘いを挑む時,まず敵を知らなければならないといいます.医療事故防止もまた同様ではないかと思います.どうすれば事故を防止できるかを考える前に,どのような事故が起きているのかを徹底的に知る必要があると思ったのです.が,事故は実際にはそれほど多くはありません.また,集めにくいという現実もあります.そこで,ニアミスを収集しようと考えたのです.それは,「不幸にも患者に損害が生じた事故」と,「エラーはあったものの未然に発見し,防止できたもの,または幸運にも患者に損害を与えなかったもの」とは本質的には差がないと考えたからです.防御のメカニズムが働いたか否か,幸運か不幸かの差なのです.
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