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特集 フェロトーシス(鉄依存性細胞死)――そのメカニズムの解明と,治療への応用
はじめに
Introduction
岩井 一宏
1
Kazuhiro IWAI
1
1京都大学大学院医学研究科細胞機能制御学,同理事・副学長
pp.131-131
発行日 2024年7月13日
Published Date 2024/7/13
DOI https://doi.org/10.32118/ayu290020131
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- Abstract 文献概要
フェロトーシスは,Ras遺伝子によってがん化した細胞を死に誘導する薬剤の解析から,2012年にDixonらによって報告されたプログラム細胞死である.がん,神経変性疾患,虚血再灌流障害などとの関連が報告されていることもあり,近年,急激な勢いで研究が進捗している.細胞死には細胞死誘発系とそれを抑制する抑制系が存在する.フェロトーシスの “フェロ” が意味する鉄は,過剰量が存在するとフリーラジカルの産生を介して毒性を発揮するので,フェロトーシスの鉄毒性のアウトカムのひとつであると考えられる.しかし,ほとんどの培養細胞は培地への鉄添加では細胞死は誘導されないことなどもあり(初代継代細胞は鉄添加で細胞が死滅することは知られていたが),鉄毒性の観点,すなわち鉄による酸化ダメージの観点からのフェロトーシス解析はほとんどなされていない.しかし,誘発薬剤を用いた研究を中心に分子メカニズムの解明は進捗し,フェロトーシスは鉄によって生じる膜の多価不飽和脂肪酸の過酸化が惹起する脂質ラジカルがトリガーとなる細胞死であることが明確となっている.本特集では,最先端のフェロトーシス研究に従事しておられる気鋭の研究者にフェロトーシスの分子メカニズム,種々の疾患におけるフェロトーシスの役割について最新の知見をご紹介いただいた.
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