Japanese
English
第1土曜特集 “かたちづくり” を制御する分子メカニズム
形態形成の理論と進化
口唇口蓋裂に表れる進化の足跡
Traces of evolution in cleft lip/palate
東山 大毅
1
Hiroki HIGASHIYAMA
1
1総合研究大学院大学統合進化科学研究センター
キーワード:
顎顔面
,
神経堤細胞
,
口唇口蓋裂
,
進化
Keyword:
顎顔面
,
神経堤細胞
,
口唇口蓋裂
,
進化
pp.83-87
発行日 2024年7月6日
Published Date 2024/7/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu290010083
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
脊椎動物の顎顔面は,頭部神経堤細胞を含む複数の顔面隆起の伸長と結合によって形作られる.こうした顔面隆起同士の結合不全によって生じる先天性疾患が口唇口蓋裂である.さまざまな動物で口唇口蓋裂は現れるが,ヒトにおいては裂目の正中に切歯骨とよばれる成分が現れるのに対して,マウスでは裂目の外側にもっぱら切歯骨が現れることが知られているなど,顔面隆起と解剖学的構造との対応関係が曖昧なまま放置されてきた.近年の進化発生学研究は,哺乳類の切歯骨が一次口蓋部と側方部の2つの骨要素に由来し,それぞれ異なる顔面隆起に由来することを示している.また同時に,哺乳類以外の動物では内側鼻隆起と上顎隆起とで複合的に構成される上顎が,哺乳類では一次口蓋を除きもっぱら上顎隆起のみから生じることがわかってきた.こうした進化研究は上記の矛盾を合理的に説明するほか,口唇口蓋裂の臨床研究におけるモデル動物選択の幅も広げるであろう.
Copyright © 2024 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.