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第5土曜特集 血管・リンパ管研究の最前線と治療への展開
血管の形成と制御因子
血管形成・血管新生・成熟化を担う転写制御ネットワーク
-――内皮エピゲノム環境に基づく転写制御
Epigenetic regulatory network programing to vasculogenesis, angiogenesis, and the vessel stabilization
南 敬
1
Takashi MINAMI
1
1熊本大学生命資源研究・支援センター,同大学院生命科学研究部分子血管制御分野
キーワード:
内皮エピゲノム
,
ゲノムワイド解析
,
bivalentエピゲノムスイッチ
,
内皮分化・活性化・成熟化シグナル
,
tip/stalk細胞
Keyword:
内皮エピゲノム
,
ゲノムワイド解析
,
bivalentエピゲノムスイッチ
,
内皮分化・活性化・成熟化シグナル
,
tip/stalk細胞
pp.970-976
発行日 2024年6月29日
Published Date 2024/6/29
DOI https://doi.org/10.32118/ayu289130970
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血管構築の礎となる血管内皮細胞は造血幹細胞と同じ系譜でもって発生し,自発的に血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を基本とする分化シグナルの下,内皮ネットワークが形成される.この血管形成はエピゲノム制御に基づく転写因子のカスケードを介してプログラムされていることが判明した.さらに,血管は管腔形成後も周囲の微小環境に応じて新たに分岐・伸長し,機能的な血管網を作り上げる(血管新生を行う)動的な組織である.正常発生後は極めて安定的な閉鎖血管系が維持されるが,がん増殖・転移や動脈硬化・血栓などの病的な環境に陥った場合に,あるいは創傷治癒などで新生血管を増やす必要が出た場合に,ふたたび内皮細胞は増殖・炎症につながる転写因子群を活性化していく.この血管新生早期ではNFAT(nuclear factor of activated T-cells)とエピゲノム修飾因子によるbivalentスイッチを含めた転写制御のシステムを構築していた.一方,血管分岐・成熟過程ではtip/stalk様内皮細胞での相互抑制システムが存在することも明らかとなった.そこで本稿では,包括的な内皮エピゲノム解析によって解明されつつある血管形成に関わる転写カスケード,および血管新生・成熟化に関わる転写ネットワークについて概説する.
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