Japanese
English
特集 GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬――非臨床・臨床のエビデンスと実臨床における注意点
はじめに
Introduction
矢部 大介
1
Daisuke YABE
1
1京都大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学
pp.955-955
発行日 2024年3月23日
Published Date 2024/3/23
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28812955
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
近年,2型糖尿病の治療法はめざましい進化を遂げており,個人の病状や併存疾患,生活習慣や好みに応じた治療薬の選択が可能になりつつある.特に,2010年以降に日本で使用がはじまったGLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬や,2023年に使用がはじまったGIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)/GLP-1受容体作動薬など,インクレチンの作用に基づく治療薬は,血糖値の改善や体重減少だけでなく,心血管疾患,糖尿病関連腎臓病(diabetic kidney disease:DKD),代謝性機能障害に伴う脂肪肝疾患(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease:MASLD)などへの追加的な利益(additional benefits)が期待されている.これらの効果は非臨床研究だけでなく,高品質の臨床研究によっても実証されつつある.また,顕著な体重減少効果を持つこれらの薬剤は,特に若年層で増加している肥満症の治療薬としても注目され,減量・代謝改善手術に匹敵する効果があるとされる.しかし,嘔気や嘔吐,下痢などの消化器関連有害事象に加え,胆道系疾患や高齢者のフレイル・サルコペニアのリスクも指摘されている.さらに,インスリン依存状態の人がこれらの薬剤を使用開始後にインスリン注射を中止し,死亡する事例もある.
Copyright © 2024 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.