Japanese
English
TOPICS 細菌学・ウイルス学
麻疹ウイルスによる中枢神経感染メカニズム
Mechanisms underlying central nervous system infection caused by measles virus
佐藤 裕真
1
,
橋口 隆生
1
Yuma SATO
1
,
Takao HASHIGUCHI
1
1京都大学医生物学研究所ウイルス制御分野
pp.1001-1002
発行日 2024年3月23日
Published Date 2024/3/23
DOI https://doi.org/10.32118/ayu288121001
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麻疹と中枢神経合併症
麻疹は麻疹ウイルスがヒトに急性に感染して発症する熱性発疹性疾患であるが,中枢神経合併症を生じることがある.0.1%の症例では,死亡率が15~30%に達する麻疹後脳炎を発症し,生存してもしばしば神経学的後遺症が残存する.この脳炎においては脳に直接ウイルスが感染した証拠はほとんど認められず,交差免疫反応が原因とされる.一方,感染者の約1万人に1人の割合で発症する亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis:SSPE)においては,中枢神経系に麻疹ウイルスが持続感染している.低年齢での麻疹感染がリスクファクターであり,1歳未満の感染では数百人に1人が発症する1).感染後6~10年程度で学力低下,性格変化等により発症すると,徐々に進行して昏睡,死に至る.HIV感染者など免疫不全状態の患者が麻疹に罹患すると,半年程度で急速に同様の脳炎を呈することがあり,これを麻疹封入体脳炎(measles inclusion-body encephalitis:MIBE)とよぶ.麻疹に対しては効果的な弱毒生ワクチンがあるものの,特異的・根治的な治療法は現時点で存在しない.
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