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連載 遺伝カウンセリング――その価値と今後・Vol.1
遺伝カウンセリングの歴史
History of genetic counseling
山本 佳世乃
1
Kayono YAMAMOTO
1
1岩手医科大学臨床遺伝学科
キーワード:
優生学への反省
,
進化論
,
臨床遺伝専門医
,
認定遺伝カウンセラー
Keyword:
優生学への反省
,
進化論
,
臨床遺伝専門医
,
認定遺伝カウンセラー
pp.1052-1056
発行日 2023年9月23日
Published Date 2023/9/23
DOI https://doi.org/10.32118/ayu286131052
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◎「遺伝カウンセリング」が生まれた背景には,過去の優生学に対する深い反省がある.19世紀に興隆した進化論と,植物や動物の「品種改良」で培われた遺伝学の知識は,第一次世界大戦前の社会情勢のなかで優生学へと変質していった.人種そして人類の改善を目指した動きは,やがて遺伝性疾患や障害をもつ人や特定の人種に対する強制断種の実行と大量虐殺へとつながった.
1947年,第二次世界大戦後に生まれた遺伝カウンセリングでは,国や第三者が当事者を差別・選択するために遺伝学的知識を用いるのではなく,当事者が自分や家族の人生に生かすために用いることを支援する.がんゲノム医療や遺伝学的検査の保険適用が進み,遺伝学的情報は多くの診療科において身近になった.現在の社会において遺伝学的情報をむやみに特別視する必要はない.だが,社会の変化によっては,人々の命や人生を危険にさらすだけの影響をもつことを歴史から学んでおく必要がある.
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