Japanese
English
連載 医療システムの質・効率・公正――医療経済学の新たな展開・Vol.8
日本における薬価制度と医療経済
-――医療保険財政の持続性向上と幅広く迅速な保険償還を目的とした設計と課題克服のための方向性
The drug pricing system and health economics in Japan
――Designed to enhance the sustainability of its national health insurance system and to secure broad and prompt reimbursement, and directions to overcome challenges
中村 洋
1
Hiroshi NAKAMURA
1
1慶應義塾大学大学院経営管理研究科
キーワード:
薬価制度
,
医療経済
,
保険償還
,
イノベーション
,
医療保険財政の持続性
Keyword:
薬価制度
,
医療経済
,
保険償還
,
イノベーション
,
医療保険財政の持続性
pp.737-742
発行日 2023年8月26日
Published Date 2023/8/26
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28609737
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Summary
本稿では,日本の薬価制度の根底にある考え方ならびに薬価の決まり方の原則について整理するとともに,今後の基本的な方針と課題克服のための方向性について記述する.
日本の薬価制度の根底にある考え方は,国による薬価の決定と幅広く迅速な保険償還である.国が薬価を決定しているのは,医療保険財政の持続性を向上させるだけでなく,国際的に見て幅広く迅速な保険償還を達成するためでもある.日本における薬価の決まり方の原則として,①イノベーションの評価,②市場原理の活用,③医療保険財政の持続性向上を目的にした調整メカニズムがあげられる.
基本的な方針である「薬剤費上昇抑制とイノベーションの推進の両立」の実現に向けた今後の課題として,本稿では①ドラッグ・ラグ/ロスの解消,②企業ならびに医療保険財政の視点からの予見性の向上,③賢い選択/節約の促進,④高額で潜在的な患者数が多い医薬品への対応,⑤毎年/中間年改定への対応のための流通構造改革をあげた.これらの課題克服には薬価制度改革のみならず,他の政策を含めた対応が求められる.
Copyright © 2023 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.