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特集 古代ゲノム学と医学の交差点
アルコール代謝関連遺伝子の多様性を現代人および古代人ゲノムから探る
Exploring the diversity of alcohol metabolism-related genes in modern and ancient human genomes
小金渕 佳江
1
Kae KOGANEBUCHI
1
1東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻
キーワード:
1B型アルコール代謝遺伝子(ADH1B)
,
2型アルデヒド代謝遺伝子(ALDH2)
,
東アジア
,
自然選択
Keyword:
1B型アルコール代謝遺伝子(ADH1B)
,
2型アルデヒド代謝遺伝子(ALDH2)
,
東アジア
,
自然選択
pp.270-273
発行日 2023年7月22日
Published Date 2023/7/22
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28604270
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1B型アルコール代謝遺伝子(ADH1B)はエタノールを強毒性のアセトアルデヒドに,2型アルデヒド代謝遺伝子(ALDH2)はアセトアルデヒドを酢酸へと無毒化する.このアセトアルデヒドの体内濃度を上げるADH1BとALDH2の派生型アレルが東アジア集団でのみ高頻度に存在する.異なる染色体上にある2つの遺伝子が,同じ表現型を示すアレルを持ち,それが同一地域で観察されることは偶然では説明が難しく,これらの多型は東アジアで正の自然選択によって高頻度になった可能性が議論されている.日本列島のALDH2派生型アレル頻度は,中央部から南北に進むにつれて減少する傾向があり,このアレルは渡来系弥生人によって日本列島に持ち込まれたことが示唆される.一方で,ADH1Bの派生型アレルでは頻度差はみられず,このアレルは縄文人と弥生人の両方に存在した可能性が指摘されている.近年では,一部の縄文人ゲノムの調査から縄文人がお酒に強い体質だった可能性が示されている.今後はより多くの古代人データを用いることで,現代では疾患と関連が見出されているこれらの多型と東アジア人の関係性が解明できるであろう.
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