今月の主題 アルコールと臨床検査
総説
アルコール代謝関連酵素と遺伝子多型
原田 勝二
1,2
Shoji HARADA
1,2
1慶應義塾大学医学部医化学教室
2株式会社SKL遺伝子染色体解析センター
キーワード:
アルコール
,
アセトアルデヒド
,
ADH
,
ALDH
,
CYP2E1
,
多型性変異
,
代謝能
,
人種差
Keyword:
アルコール
,
アセトアルデヒド
,
ADH
,
ALDH
,
CYP2E1
,
多型性変異
,
代謝能
,
人種差
pp.579-588
発行日 2003年6月15日
Published Date 2003/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100936
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〔SUMMARY〕 アルコール飲料中のエタノールは主としてアルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase;ADH)により酸化され,アセトアルデヒドになる.さらにアルデヒド脱水素酵素(aldehyde dehydrogenase;ALDH)により酸化が進むと酢酸となる.酢酸はその後クエン酸回路に入り,10種類ほどの酵素が順次代謝を行う過程で炭酸ガスと水になる.エタノールの代謝に関与する酵素はADHのほかcytochrome P-450 2E1(CYP2E1)がある.これらの酵素はアミノ酸配列の類似性によりスーパーファミリーを構成し,それぞれの酵素蛋白(アイソザイム)は独立した遺伝子の産物であり,一次,二次,三次構造の違いから,様々な基質に対する親和性が異なってくる.例えば,エタノールに対する親和性が高いのはクラスⅡADHであり,とりわけADH2アイソザイムの代謝能が高い.アセトアルデヒドに対してはALDH2アイソザイムが最も親和性が高い.近年,ヒトADH,ALDH,CYP2E1の種類と生化学的特徴が解明されるとともに遺伝子の構造や染色体上の位置も明らかにされ,遺伝子多型の人種による違いも数多く報告されてきた.さらに,遺伝子の多型性変異とその表現型,およびアルコール代謝との関連から,日本人におけるアルコール代謝の遺伝的特異性が明らかにされてきた.
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